リスキリングとは、今までとは異なるスキルを習得して新しい業務・職種に就く手法です。
「DX時代にはリスキリングが必須」「リスキリングをしてキャリアもスキルも向上させよう」など、近年「リスキリング」という単語を耳にする機会が増えました。
実際に従業員のリスキリングを主導する企業も増えており、リスキリング施策に使える政府主導の補助金・助成金も整備されています。
株式会社リクルートマネジメントソリューションズが公開している企業における『リスキリング』『学び直し』の推進に関する実態調査によると、経営やマネジメント層から「リスキリング」「学び直し」への期待がある企業は6~8割でした。
本記事では、リスキリングについて詳しく解説します。
リスキリングの基本的な概要から、注目を浴びている理由まで幅広く解説するのでご参考ください。
リスキリングとは
リスキリングとは、今までとは異なるスキルを習得して新しい業務・職種に就く手法です。
「Re(やり直し)」と「Skill(技術)」を掛け合わせて生まれた造語であり、最先端技術を学んでキャリアアップおよびスキルアップを目指す手法として確立しました。
近年は特に以下の分野におけるリスキリングのニーズが高まっており、企業主導で従業員向けのリスキリングを始めるケースが増えています。
- DX
- AI
- VR・AR
- プログラミング(エンジニアリング)
- ビッグデータ解析
- 機械学習
- 情報セキュリティ
- クラウドコンピューティング
- マーケティング
- プロジェクトマネジメント
- 語学
つまり、今の時代ニーズに合った学びがリスキリングとして注目されています。
ニーズに対して人材数が追いついていない分野でもあるため、リスキリングの意義は十分にあると言えるでしょう。
リスキリングが注目を浴びている理由
リスキリングが注目を浴びている理由は、以下の通りです。
次でひとつずつ解説していきます。
政府がリスキリングを推奨しているから
リスキリングが注目される理由のひとつとして、政府が積極的にリスキリングを推奨している点が挙げられます。
世界各国がリスキリングに注目し始めたのは、2018年1月に開催された世界経済フォーラム(World Economic Forum、通称「ダボス会議」)で発表された、「Towards a Reskilling Revolution – A Future of Jobs for All(リスキリング革命に向けて-誰もが仕事がある未来)」がきっかけとなっています。
日本でもデジタル人材育成プラットフォーム『マナビDX』のリリースや第四次産業革命スキル習得講座認定制度などが始まりました。
リスキリングをしようと頑張る個人や、従業員のリスキリングを支援する企業を積極的に歓迎するようになっています!
技術の進化が急速に進んでいるから
リスキリングが注目される背景には、技術の急速な進化も関係しています。
- デジタルトランスフォーメーション
- AI
- ロボティクス
- クラウドコンピューティン
などの普及により、労働市場は劇的に変化するようになりました。
変化に対応するには企業や個人が新たなスキルを習得するのが必須であり、従来型のビジネスモデルだけにとらわれていると競争力の低下につながると危惧されています。
また、技術の急速な進歩に伴い、データサイエンティストやUX/UIデザイナーなど、近年急速に需要が高まっている職種も増えています。
新しい技術を学ぶことはスキルアップだけでなくキャリアアップにもつながると認識されるようになり、リスキリングで最新技術を学ぼうとする人が増えているのです。
リスキリングが企業の競争力向上につながるから
従業員向けのリスキリングプログラムを提供することは、自社の競争力向上につながります。
例えば専門業者に外注することなくAIをフル活用した業務システムを構築できれば、短時間かつ最小限の人員で大量の仕事ができるようになり、収益向上につながります。
同業他社にはないオリジナリティあふれる最新ソリューションを提供できれば、業界で唯一無二のパイオニア的存在になることも可能で、競争力を大きく伸ばすこともできるでしょう。
リスキリングは企業のイノベーションを促進する効果もあるからこそ、時間と手間をかけてでもリスキリングプログラムを提供する価値があるのです。
企業がリスキリングを導入するメリット
企業がリスキリングを導入するメリットは、主に以下の通りです。
それぞれのメリットについて解説するので、なぜリスキリングに積極的が企業が増えているのか探ってみましょう。
業務効率が向上する
リスキリングによって新たなスキルを持った従業員が増えると、業務プロセスの見直しが進みます。
新しい視点を持つ従業員が従来の業務フローを分析し課題を解決できれば、より短い時間で効率よく業務ができます。
無駄な工程が削減され、より効率的な業務フローが確立されるので、引継ぎや後進への指導も簡略化できるでしょう。
また、業務をより正確に遂行できるためエラーやミスがなくなるなど、副次的なメリットも得られます。
イノベーションが促進される
新しいスキルを学ぶ過程で従業員は自分の業務や業界に対する理解を深め、創造的な解決策を提案できるようになるため、イノベーションが促進されます。
例えばデジタルマーケティングの新しい技術を学んだ場合、マーケティングチームは従来の手法にとらわれず、斬新なキャンペーンを展開できるようになるでしょう。
異なる専門知識を持つ人々が集まり、協力して新しいアイデアを生み出すなど、コラボレーションにもつながります。
人材が定着する
リスキリングは従業員に新たなスキルを習得させるだけでなく、彼らのキャリアパスを広げる機会としても役立ちます。
リスキリングに成功した人はよりハイスキルな人材として重宝されるため、役職や給与などの待遇が改善しやすいのがポイント。
結果、労働環境に満足してもらうことができ、人材の定着率が上がります。
企業がリスキリングを導入するデメリット
企業がリスキリングを導入するデメリットとして、以下が挙げられます。
リスキリングには多数のメリットがある一方、デメリットもあるので注意点として事前に把握しておく必要があります。
以下でデメリットについてひとつずつ解説します。
コストがかかる
リスキリングプログラムの考案や研修には、コストがかかります。
特に、外部の専門家を招いたり専門機関に研修を委託する場合、リスキリングのコストはかなり高額になることもあるので注意しましょう。
従業員がリスキリングプログラムに参加するためには通常の業務を一時的に中断する必要があり、研修期間中の実務をどう回すかも課題となります。
ハイレベルなリスキリングプログラムが必要
リスキリングは時代の最新技術を学ぶことでもあるため、ハイレベルなプログラムが求められます。
例えば、プログラマーではない職種の人にプログラミング思考を定着させるのは難しく、難航を極めるかもしれません。
普段プログラミングスキルを実務で使っている人でも、馴染みのないプログラミング言語や別ジャンルである機械学習について学ぶハードルは高いです。
個々のニーズに合ったカスタマイズされたプログラムを提供できない場合、外部の専門家やリスキリングに特化したスクールを使うなどの工夫も必要です。
従業員が抵抗を示す場合がある
変化への恐れを感じる人は多く、慣れ親しんだ今の業務を離れてリスキリングすることに不安を抱くケースがあるので注意しましょう。
特に年齢が高い従業員の場合、新しい技術・手法に対する学習意欲が低下しやすく、「自分にはできないのではないか」と考えてしまうことは少なくありません。
- 時間が取れない
- リソースが不足している
- 上司からのサポートが不十分である
などの不安も、リスキリングに対するネガティブな感情になってしまいます。
リスキリングの目的・意義・手法などを広く理解してもらい、納得してプログラムに参加してもらう工夫が必要です。
リスキリングとリカレント教育の違い
リスキリングとリカレント教育の違いで最も代表的なのは、「誰が主導するか」にあります。
リカレント教育とは、実務で役立つスキルを実務以外の場所で学ぶ教育手法です。
リカレント教育を主導するのは個人であり、自分の実務に役立つスキルや興味のある分野について、仕事を一度離れて学び直します。
リスキリングの場合、主導するのは企業であり、DXやAIなど最新技術を学ぶことが大半です。
仕事を離れることなくスキルを磨くことができるので、時間的なブランクがないのもリスキリングの良いところですね。
リスキリングで使える補助金・助成金一覧
リスキリングで使える補助金・助成金を使えば、コスト負担を下げることが可能です。
名称 | 概要 | 支給対象 | 助成額 |
---|---|---|---|
人材開発支援助成金 | 職務に関連した専門的な知識及び技能を習得させるための職業訓練などを実施した場合に助成 | 週20時間以上の労働を行う雇用保険の被保険者 | コースにより異なる |
【東京都】DXリスキリング助成金 | DXに関する職業訓練またはeラーニングなどを実施する際にかかる訓練経費の一部を助成 | ・都内に本社や事業所の登記がある中小企業や個人事業主 ・訓練に要する経費を従業員に負担させていないこと など | 助成対象経費の2/3(上限64万円/年度) |
教育訓練給付制度 | 働く個人の主体的な能力開発やキャリア形成を支援する制度 | 厚生労働大臣が指定した教育訓練を修了した個人 | ・専門実践教育訓練:最大で受講費用の70%(年間上限56万円) ・特定一般教育訓練:最大で受講費用の40%(年間上限20万円) ・一般教育訓練:最大で受講費用の20%(年間上限10万円) |
企業向けの助成金もあれば、個人向けの給付金もあるのでチェックしておきましょう。
いずれも上手に活用することでリスキリングの負担を軽減できます。
リスキリングとしておすすめの資格5選
リスキリングとしておすすめの資格は、以下の通りです。
以下でそれぞれの特徴を解説します。
ITパスポート
ITパスポートは情報処理技術者試験のひとつであり、情報技術に関する基礎的な知識を測定する資格として活用されています。
コンピュータの基本構成、ネットワークの仕組み、データベース、セキュリティ、プロジェクト管理など、幅広い内容を学習できるのが特徴です。
ITスキル向上を目指す人にとっての登竜門的な資格であり、上位資格への足がかりとして挑戦するのもおすすめです。
VBAエキスパート
VBAエキスパートはMicrosoft Office製品で利用されるVisual Basic for Applications(VBA)に関する資格です。
VBAを使った自動化によってルーティンワークの負担を軽減しやすくなるので、特に普段からExcelをよく使う職種に最適です。
VBAの基礎から応用、デバッグ、エラーハンドリング、オブジェクト指向プログラミングの概念など、幅広い知識もできます。
Python 3 エンジニア認定基礎試験
プログラミング言語のひとつである「Python」に関する知識を問う資格であり、基本的な文法、データ構造、制御フロー、関数、モジュール、例外処理など、プログラミングの基礎を理解していることを証明します。
Pythonは機械学習・自然言語処理・画像認識・時系列解析などAIの分野でよく使われるプログラミング言語でもあるので、AIリスキリングの一環として挑戦してみてもよいでしょう。
少しずつステップアップさせ、Python 3 エンジニア認定実践試験など、より上位の資格試験に挑戦する方法もあります。
マーケティング検定
マーケティングの基礎から応用までを体系的に習得した人に対し、マーケティングの知識レベルを証明する資格です。
学習範囲は広く、マーケティングの基本概念から実践的な戦略、分析手法まで幅広い単元をカバーしているので基礎から徹底的に学びたい人におすすめ。
その他、消費者行動、市場調査、プロモーション、ブランディングなど、多岐にわたるテーマが出題されます。
プロジェクトマネージャー試験
プロジェクトマネージャー試験は、プロジェクト管理の知識やスキルを測定し、認定するための資格試験です。
プロジェクトマネジメントの手法やプロセス、リーダーシップ、リスク管理などの幅広い分野にわたる内容が出題されます。
理論や手法を体系的に学べる試験でもあるため、過去問や模擬試験を通じて出題傾向を把握し、試験対策としてもよいでしょう。
リスキリングに関するよくある質問
最後に、リスキリングに関する「よくある質問」を紹介します。
気になる項目がある方は、チェックしてみましょう。
リスキリングの補助金は個人でも受けられる?
「教育訓練給付金」であれば、個人で受けることも可能です。
ただし、離職中で45歳未満の人が初めて専門実践教育訓練を受講し、一定の要件を満たすと訓練受講期間中に失業手当(失業保険)の80%相当が受け取れる制度である点に注意しましょう。
在職中の人は申請できません。
リスキリングでは何を学ぶ?
言葉自体が新しく、その概要が掴めないという人もいるため、リスキリングでは何を学ぶ?という疑問も多いです。
リスキリングでは、DX・AI・VR/AR・ビッグデータ解析など最先端技術について学ぶことが多いです。
ソリューション開発から業務効率化まで、幅広い活用の道が用意されています。
リスキリングは50代でも大丈夫?
リスキリングできる年齢に制限はなく、50代からの挑戦も可能です。
特にプロジェクトマネージメントやマーケティングなど、これまでのリーダーシップ経験を活かせるリスキリングに最適です。
リスキリングの成功事例は?
リスキリングの成功事例として、以下が挙げられます。
- データ活用について学んだことで、顧客の購買行動に対して正確なレコメンドができるようになった
- eラーニングプラットフォームを活用したリスキリングを促進したことで、スキルの定着が早まった
- データサイエンスやAIに関する教育プログラムを強化し、新たなソリューション開発ができた
リスキリングの成功事例は多く、自社の課題に合わせたプログラムにすればより効果を実感しやすくなります。
リスキリングの語源は?
リスキリングの語源は、「Re(やり直し)」と「Skill(技術)」にあります。
2つの単語を掛け合わせて生まれた造語ですが、近年は新たな言葉として定着しつつあります。
従業員のリスキリングはショーケースキャピタル!
リスキリングは時代の最先端技術を学ぶ手法であり、自社の競争力強化や個人のスキルアップにつながります。
従業員向けのリスキリングプログラムを提供する企業も増えているので、時代ニーズに合った知識を習得してほしいときに活用しましょう。
ショーケースキャピタルでは、「DX人材育成研修プログラム」として従業員のリスキリングを支援しています。
DXだけでなく、AIを活用した業務効率化研修やSNSを活用したマーケティング戦略研修など、多様なコースを準備しているのでご活用ください。